藤田千恵子『美酒の設計』と新政特別純米しぼりたて生原酒
- 2010/01/29
- 02:55
藤田千恵子さんの名前は、はるか昔太田和彦さんの『居酒屋大全』で知ったはずである。もう20年近い昔だな。
そのあとも、喜楽長の天保正一杜氏を紹介した『杜氏という仕事』なども、興味深く読んだ。
今回は、由利正宗の高橋藤一杜氏について書かれた本だ。
喜多酒造と同じく、齋彌酒造店にも訪れた自分としてはぜひ読まなければいけない。
幸い、能代の天洋酒店の浅野さんが本と酒の美酒の設計のセットを売り出してくれた。しかも筆者と高橋杜氏のサイン入りでだ。
高橋杜氏の字は丁寧な楷書で、杜氏の几帳面な仕事ぶりを思わせる。
また、本書では高橋杜氏の革新的な取り組みや、三増酒全盛時代から純米酒の良さを確信していたこと、杜氏の人柄の良さなどがよく分かる。
現存する人に直接取材しているため、影の部分などがなく、礼讃一色になっているのが気になるが、仕方なかろう。
で、だったら酒も「美酒の設計」にすべきところをはずして、同じ秋田の新政。
かつては地方の大手蔵といったイメージだったが、ここにきて、代替わりして蔵の規模も小さくなったこともあってか、いい酒を醸すようになったようだ。
我が秋田酒の伝道師、浅野さんがほめるんだから間違いはない。
今回の「特別純米しぼりたて生原酒」もいい味わいだった。
秋田酒の特徴である、甘口の良さを最大限に感じさせる。これ自体が充分デザートだ。いわば、ハンガリーの貴腐ワインと言えば言い過ぎか。
それでいて、だれることもなく、もっちゃりしていることもなく、きりっとしている。
地酒は一軒だけが抜きんでていてもだめなのだ。何軒かが競い合うことで、その地方の酒がよくなっていく。そういう意味では、高橋杜氏、秋田の酒の後輩たちに安心してください、といったところ。
天洋からセットで取り寄せたので不明だが、新政のホームページから察するに、4合瓶1365円。
この本と新政については昨年12月26日にも紹介しています。
2010年1月25日読了
2009年11月初版 マガジンハウス