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井上ひさし『青葉繁れる』

追悼で選んだのはこの本。
無論、74年に買ったのではなく、古本で買ったもの。
今の文庫本と違い、紙質も悪く、薄くて茶に変色で破けそうだ。活字もかなり小さい。

この本の魅力は旧制高校気質の少年たちとそれを温かく見守る教師や地域の人たちだろう。
仙台の料亭の息子であり一高生の稔は『若草物語』を1週間で13回も見る映画少年だ。
と同時に、いつも県立二女高の女の子を見ると、自分が東大や慶大、または帯広畜産大の学生になって、少女を押し倒す妄想をする、作者の分身とも思える少年だ。
妄想は彼だけでなく、デコ、ユッヘ、ジャナリ、日比谷高校から転校してきた俊介といった仲間も同じで、頭の中は女の子のことでいっぱいだ。
全員、二女高との合同上演と聞いて、演劇部に入部して後悔。
二女高の生徒をデートに誘って失敗。
憧れの芸者が校長と男女の仲であると知って天誅を加える。
酒に酔って二女高・警察署・在日米軍の看板を盗み文化祭で展示……といった、真面目な方なら眉をひそめることばかりだ。
それでも彼らは退学にもならず、学校内外での日々を楽しむ。

無論、誇張された部分も多いだろうから、舞台になった当時でさえ、それは許されないだろう、というのもあるはずだが、一つのユートピアとして現在の状況と比べると、息苦しさが違うなあと思う。

男性諸氏はこの登場人物の中に、ニキビ面だった当時の自分を重ねない人はいない(だろう)。

理知的なジュリエットなんて、炊きたての冷飯、痩せぎすの肥っちょ、見上げるような小男、前途洋々の老人、抜群の不成績、一匹狼の大群、何千何万という四十七士、傾国の醜女、不親切な人情家みたいなものだ。
――こんな言葉遊びにも、彼の特徴がよく出ている。

2010年4月17日再読
1974年7月初版 文春文庫

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コメント

No title

実は、狐丸は井上さんの元妻の西舘好子さんとお付き合いがありまして、井上さんにはDVのイメージが強く、倦厭していたのですが・・・。いざ亡くなって、その功績を眺めてみると、確かに凄い人だったんだなあ・・・と、今更ですが見直す思いです。
心からご冥福をお祈りいたします。

No title

井上ひさしさんの本は読んだ事が無いのですが
王子さんの記事を読むと読みたくなってきます^^

No title

狐丸様
そうですか。ネットで調べていると、同じように井上=DV説がありました。
なかなか、夫婦の事情は難しいですね。まして、芸術家となると。

No title

RINKOさま。
娘さんを持つ身としては、男子校のやつらがどんなことを考えているのかの「傾向と対策」になりますよ(笑)
少なくとも、阿部夏丸のような男の子はいなさそう…。

No title

この本 面白そうですね!
読んでみよう!

No title

YOYOさま。
ぜひどうぞ。
声変わりしたころのわが子を思い浮かべながら……(笑)

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王子の狐

Author:王子の狐
Yahoo!からの引っ越しです。
現在は東京・神奈川での飲み食いの記事中心。
昼は人形町、夜はあちこちに出没しています。

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